2017.10.04

【博士の育毛診療日誌】コーム付きドライヤーによる機械的脱毛症

【博士の育毛診療日誌】コーム付きドライヤーによる機械的脱毛症

機械的脱毛症 年齢:50歳  性別:女性

 治療開始前の頭頂部 
一見すると円形脱毛症に見えるが、マイクロスコープ画像で、機械的に縦に裂けた毛髪が多いことがわかり、機械的脱毛症と診断した。

機械的脱毛症とは

帽子や枕による慢性的な圧迫、摩擦、過度のマッサージ、ねじれといった機械的刺激によって生じる脱毛を、「機械的脱毛症」といいます。

「円形脱毛症では?」と相談にきたが・・・

Oさんは当初、「頭頂部の髪が部分的に薄くなっているので、円形脱毛症では?」と相談に来られました。一見すると、確かに薄毛の部分は円形になっています。しかし、患部の髪を引っ張ってみても脱毛は見られず、毛根部は正常のようです。
200倍のマイクロスコープで頭皮を見てみると、患部に機械的に縦に裂けてちぎれた損傷毛が多くあることがわかりました。円形脱毛症なら毛が抜けた後の毛穴が見られますが、Oさんの場合、髪の根元はしっかり残っています。
聞けば、頭頂部の髪をふわっとさせるためにコーム付きのドライヤーを頻繁に使っておられるとのこと。どうやら、それが原因のようです。コームに髪を巻き付け強く引っ張ることで、毛髪が縦に裂け切断されてしまったのです。

ドライヤーの使い方や使いすぎには注意

原因がわかったことで、Oさんはすぐにドライヤーの使用を中止されました。回復を早めるため育毛剤の外用も行ったところ、症状は改善し完治しました。
コーム付きドライヤーを使用される方は多いと思いますが、ひどい場合は損傷が毛根にまで及び、羽毛状になってしまうこともあります。使い方や使いすぎには、十分注意していただきたいものです。

育毛専門医 桑名博士
1954年高知県生まれ。名古屋大学医学部卒。医学博士。
シャーレ内での毛包細胞培養に成功後、各種育毛剤を開発する。皮膚科部長を務めた高知赤十字病院時代は日本でも珍しい「育毛外来」を開設。現在は桑名皮フ科院長。日本医学育毛協会理事、日本臨床毛髪学会評議員。