2021.07.21

【博士の育毛診療日誌】女性の脱毛症事例

【博士の育毛診療日誌】女性の脱毛症事例

ひと昔前に比べ、深い髪の悩みを持つ女性の患者さんの数は非常に増えました。にもかかわらず、女性の脱毛について正しい知識をお持ちの方は、まだまだ少ないようです。そこで今回は、女性の薄毛のタイプについていくつかご紹介していきます。

 

女性の薄毛の多くは女性型脱毛症

医学的には、毛髪が薄い状態をまとめて「脱毛」と呼んでいます。
脱毛にはいくつかのパターンがあり、なかでももっとも多いのが、主に頭頂部が薄くなる女性型脱毛症です。

 

女性型脱毛症は、遺伝的体質により、毛髪が太くしっかりした硬毛になるまで成長できず、太さ40ミクロン以下の細い軟毛のままで抜けてしまうものです。

そのため全体的に硬毛より軟毛の割合が多くなり、頭皮が透けて見えるといった薄毛の症状が起こります。遺伝的体質といっても、原因については不明な点が多いのも事実です。

また、女性は男性と違って女性ホルモンの影響を大きく受けます。女性ホルモンの増減による脱毛、遺伝や生活習慣による脱毛など、さまざまな要因が関係しているケースもあり、男性の薄毛と比べ複雑だといえます。女性型脱毛症は若年層にも見られ、高校生の患者さんの症例もあります。

 

個人差の大きい加齢性脱毛症

加齢性脱毛症とは、65歳くらいを超えた人に多く見られる症状です。皮膚の下で毛を包んでいる毛包が、加齢によって縮小・消失し、頭髪全体が細くなっていきます。いわゆる「毛がやせてくる」という状態で、全体的にボリュームダウンしていきます。


進行には個人差がありますが、髪が細くなることでしだいに地肌が見えるようになり、とくに隠しにくい頭頂部の薄さが目立ってきます。


個人差があるのは、遺伝的体質によるものが大きいと思われますが、それだけではありません。日頃の生活習慣や食事なども、頭皮の血流を悪くし、薄毛を加速させる要因と考えられます。

また、髪が成長できずに細い軟毛のまま抜けてしまう「女性型脱毛症」と併発するケースも少なくありません。「加齢」は避けて通れない現象ですが、生活習慣の改善などによって、加齢性脱毛症の進行を遅らせることは十分可能です。

 

薬剤による休止期脱毛

薬剤による休止期脱毛は、薬剤の作用により髪の成長期が中断し、退行期から休止期に移行するために生じます。

薬剤を投与してから脱毛が生じるまでに2〜4カ月の期間を要するため、薬の服用が原因であると気づかない場合が多いようです。

薬剤による休止期脱毛は一時的な“毛髪の冬眠”のようなものですので、治療終了後半年もすれば元の状態に戻るものと思われます。

薬剤の中には、抗がん剤など高率で激しい脱毛を生じるものもあります。もし異常な脱毛が起きたら、主治医に相談し、薬剤の服用履歴を調べて、原因を明らかにしておくと対策も講じやすいでしょう。

※自己判断で薬をやめたりすると、病気の治療に支障が生じ、非常に危険です。必ず医師の指示を仰ぎましょう。

私のところに来られる患者さんのなかにも、育毛剤の外用や生活習慣の見直しによって脱毛が軽快
した例はたくさんあります。

薄毛になったからといってクヨクヨ悩まず、前向きにお手入れを続けていくことが一番の改善策です。また、原因不明の脱毛が起きた場合は、すみやかに医師の診断を受けることをおすすめします。

 

育毛専門医 桑名博士
1954年高知県生まれ。名古屋大学医学部卒。医学博士。
シャーレ内での毛包細胞培養に成功後、各種育毛剤を開発する。皮膚科部長を務めた高知赤十字病院時代は日本でも珍しい「育毛外来」を開設。現在は桑名皮フ科院長。日本医学育毛協会理事、日本臨床毛髪学会評議員。