2016.09.30

【育毛の基礎知識】正常な抜け毛と女性型脱毛症(薄毛)の違いって?

【育毛の基礎知識】正常な抜け毛と女性型脱毛症(薄毛)の違いって?

髪は生えたり抜けたりを繰り返しながら、一定の毛量を保っています。ただし、秋はほかの季節に比べて、抜け毛の量が増えることが分かっています。しかし、これは誰にでも起こることですので心配はいりません。抜け毛が増えた気がする……と感じたときは、それが髪の新陳代謝による正常な抜け毛なのか、脱毛症による問題のある抜け毛なのかを分けて考えることが大切です。

季節によって変動する“正常な抜け毛”の数

毛髪のサイクルを一年で考えると、2月から8月(春・夏)にかけては毛髪量が多く、9月から翌年の2月(秋・冬)までは少ない傾向にあります。日本人の毛髪は、平均して毎日50~70本の髪が抜けていますが、秋になると100~200本と増えます。

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上記のことから「秋は抜け毛の季節」といえますが、これにはふたつの原因があります。ひとつは動物の毛の生え替わり現象の遺伝子がヒトにも残っているため。もうひとつは夏バテやダイエットによる栄養不足、疲れ、ストレス、紫外線ダメージなど、生活習慣の影響と考えられます。つまり、髪は抜けて生え変わるものであり、誰でも秋には抜け毛が増えるものなのです。

年齢を重ねると髪の回復は遅れがちに

ただし、年齢とともに全頭髪における成長期毛(頭皮の外に出ていて実際に目に見えている髪)の割合が減ってくるため、秋の抜け毛が気になりやすくなります。また、年齢を重ねると髪が細くなっていく傾向があるため、本数は若いころとあまり変わらなくても、全体的に薄くなったと感じる方もいらっしゃいます。

40代以降の女性はホルモンバランスの変化により、元の状態に回復しにくいことも。そういう意味では、秋は育毛剤でのお手入れをスタートするのにいい時期といえるでしょう。

女性の薄毛は40歳前後から始まる

女性の薄毛は、一般に女性ホルモンが減少し始める40歳前後から見られます。毛髪の発生に関与している男性ホルモンとのバランスが崩れるためですが、男性の脱毛に比べ、大きな変化はありません。

頭髪全体が薄くなる「女性型脱毛」の多くは、髪が細くなるのが大きな原因です。これを「びまん性脱毛」といい、“びまん”とは一面に広がるという意味で、頭皮の広い範囲で毛髪が薄くなっていくことを示します。女性の薄毛問題は、「髪の毛の本数」とともに、 「髪の細さ」にも注目する必要があったのです。

女性のびまん性脱毛は、いくつかの種類に分類されます。毛髪密度、サイズが減少する「老人性脱毛症」、ヘアサイクルにおける休止期が通常より長くなる「慢性休止期脱毛症」などが代表的です。
また、ダイエットによる栄養不足や亜鉛不足、病的な疾患によって脱毛が起こることもあります。

「慢性休止期脱毛症」の原因・対策事例4つ

休止期が長くなる(新たな発毛が遅い)「慢性休止期脱毛症」にはさまざまな原因がありますが、代表的なのは次の4つです。対策もあわせて見ていきましょう。

甲状腺疾患による脱毛

甲状腺ホルモンは髪の発育に欠かせないホルモンのひとつ。医療機関で治療が可能です。

亜鉛欠乏症による脱毛

亜鉛は髪のもとであるたんぱく質を合成する成分。牡蠣(かき)やココアなどで補ったり、亜鉛のサプリメントを摂取するとよいでしょう。

内臓疾患による脱毛

内臓疾患が髪の毛に影響を与えている場合があります。専門医のもとで疾患そのものを治療しながら、育毛剤の外用を補助的に行います。

ダイエットによる脱毛

メタボ対策等のためのダイエットが、栄養不足を招く場合も。栄養バランスのよい食事をして、医師や専門家のもとで行ってください。

あなたの抜け毛はどっち? 自然な抜け毛と脱毛症を見分ける

髪の抜け方を思い出してみてください。「一度に抜ける」「部分的に抜ける」などの症状がみられたら要注意です。また、抜けた髪の根本が「先が細って縮れている」場合は、脱毛症による抜け毛の可能性があります。健康な抜け毛の毛根部は、こん棒のような丸みを帯びた形をしています。

産毛のような髪が抜ける“女性型脱毛症”や、大量の抜け毛に産毛や先細った毛が混じる“円形脱毛症”、抗がん剤やその他の薬で髪の成長が阻害され、毛根部が先細った毛が大量に抜ける“薬の副作用による脱毛”などが考えられます。

まとめ

女性の薄毛は生活習慣の見直しや、ホルモンや内臓疾患の治療を行うことによって、改善する可能性が大いにあります。ここにあげた脱毛症以外にも、脱毛にはさまざまな種類がありますから、自己判断で終わらず、専門医の診断を受けるようにしてくださいね。

育毛専門医 桑名博士
1954年高知県生まれ。名古屋大学医学部卒。医学博士。
シャーレ内での毛包細胞培養に成功後、各種育毛剤を開発する。皮膚科部長を務めた高知赤十字病院時代は日本でも珍しい「育毛外来」を開設。現在は桑名皮フ科院長。日本医学育毛協会理事、日本臨床毛髪学会評議員。