2016.09.30

【博士の育毛診療日誌】抜け毛・薄毛の原因は薬の副作用!?

【博士の育毛診療日誌】抜け毛・薄毛の原因は薬の副作用!?

使っている薬剤の副作用によって起こる脱毛症

病気の治療に使われている薬剤に、脱毛の副作用が?

Mさんは、抜け毛が多くなったのが気になったために当院を受診されました。Mさんの頭皮を100倍ズームのマイクロスコープで確認してみると、毛髪が減っている状態の慢性休止期脱毛症という所見でした。このような脱毛の原因は、内科疾患もしくは薬剤の副作用によるものの可能性があります。

そこで、内科的な病気がないかとMさんに尋ねると、C型肝炎を患っているというお答えでした。その治療のため、抜け毛が増える数ヶ月前にC型肝炎のウイルスを排除するタンパク質製剤であるペグインターフェロン注射を受けていたとこのことでした。

Mさんの脱毛は、ペグインターフェロン注射の副作用によるものと考えられます。すでにこの注射での治療は終わっているとのことでしたので、そのうち軽快するでしょう、とお伝えした上で女性用育毛剤を処方したところ、しばらくして新生毛が見られるようになり、改善しました。

薬剤の副作用で脱毛が起こる原因とは

今回のケースは、病気の治療に使われた薬剤の副作用によって髪の成長期が中断され、休止期に入ったために起こった抜け毛と考えられます。このような場合では薬剤の投与後、2~4ヶ月後に休止期の毛が再び成長期に入る際に、押し出される形で脱毛するという特徴があります。これが、Mさんの抜け毛のメカニズムだったのです。

脱毛の副作用を持つ薬剤は意外に多い

すべての医薬品には、副作用があるとされています。脱毛の副作用を持つ薬剤は、降圧剤や経口血糖降下剤、高脂血症治療剤やうつ病治療剤など多く存在しています。中でもMさんのC型肝炎治療に用いられていたペグインターフェロンは、程度の差はありますが、約68%の方に脱毛症が見られるといわれています。

まとめ

今回のMさんのケースのような薬剤が原因の脱毛は、薬剤の使用を中止することで改善するものです。しかし脱毛の副作用を持つ薬剤での治療が継続されている間は、脱毛が治りにくいもの。もし中年以降の女性で薄毛・抜け毛にお悩みで、かつ何種類かの薬剤を服用しているのであれば、担当医に服用している薬剤とその副作用について確認しておくのが大事です。そして可能であれば、脱毛の副作用がない他剤に変更してもらうのがよいでしょう。

育毛専門医 桑名博士
1954年高知県生まれ。名古屋大学医学部卒。医学博士。
シャーレ内での毛包細胞培養に成功後、各種育毛剤を開発する。皮膚科部長を務めた高知赤十字病院時代は日本でも珍しい「育毛外来」を開設。現在は桑名皮フ科院長。日本医学育毛協会理事、日本臨床毛髪学会評議員。