2016.09.30

【博士の育毛診療日誌】亜鉛不足で抜け毛・薄毛に!?

【博士の育毛診療日誌】亜鉛不足で抜け毛・薄毛に!?

抜け毛・脱毛を改善するために摂るべき栄養素とは

亜鉛不足が抜け毛の原因に?

当院を受診されたNさんは、最近抜け毛が多くなったため市販の育毛剤を使ったものの、効果なし。初診ではやや頭髪が薄くなってはいたものの、頭皮が透けるといった脱毛病変は見られず、頭髪を引っ張った時に少数の抜け毛があるという状態でした。

円形脱毛症の疑いがあったため、マイクロスコープを用いて頭皮を観察。円形脱毛症の場合に見られる切れ毛や折れ毛は確認できませんでしたが、粗毛で頭髪の密度が低く、慢性休止期脱毛という所見でした。

そこで血液検査を行ってみたところ、基準値64~111μg/dlである亜鉛値が37μg/dlと極端に低いことが判明しました。

髪はたんぱく質からできています。そして微量ミネラルである亜鉛は、食事で摂取したたんぱく質を分解・合成する働きを持っています。つまり亜鉛が不足してしまうと、髪の毛の元のたんぱく質を分解・合成できなくなり、抜け毛が増えたり新しい髪が生えにくくなったりするトラブルが起こってしまうのです。

亜鉛を補うことで脱毛を改善

亜鉛不足となっていたNさんへは、牡蠣やココア、抹茶などの亜鉛を多く含む食品を積極的に摂るように指導をしました。すると1ヶ月後には、血中亜鉛値が135μg/dlまで増加。基準値は超えていたものの、亜鉛過剰症の心配はなかったため、食事療法を継続してもらいました。さらに頭皮と髪へ栄養を与えるために『リリィジュ』の外用を行った結果、2~3ヶ月経った頃には抜け毛が改善できました。

偏食や消化管の不調での亜鉛不足も

日本人の食生活では、亜鉛欠乏症は起こりにくいとされています。しかし偏食があったり、消化管からの亜鉛の吸収に問題があったりすると、Nさんのような亜鉛不足からの脱毛というケースもあり得ます。

Nさんは牡蠣を食べられる方だったので食事療法に問題はありませんでしたが、もし牡蠣が苦手である場合は、亜鉛、または亜鉛酵母のサプリメントを利用するという対策もあります。

まとめ

今回のケースでは、亜鉛の栄養不足が脱毛を招いていました。このことからもわかるように、髪の毛の健康のためには栄養バランスを考えた食事を摂るのが何よりも大事ということですね。

育毛専門医 桑名博士
1954年高知県生まれ。名古屋大学医学部卒。医学博士。
シャーレ内での毛包細胞培養に成功後、各種育毛剤を開発する。皮膚科部長を務めた高知赤十字病院時代は日本でも珍しい「育毛外来」を開設。現在は桑名皮フ科院長。日本医学育毛協会理事、日本臨床毛髪学会評議員。